人は常に欠けている(1)

人は常に欠けている(1)

友人の一人は身体的障害を持っていた。
その友人はある日突然、不慮の事故に遭い、それまでの素晴らしいキャリアや様々なできていたことが全くなくなってしまった。
友人と友人の家族は途方に暮れ、誰とも連絡を取らずだった。
連絡をしてもなんとなくのらりくらりとかわされてしまい、数年経った頃にはこちらから連絡をすることも控えるようになっていた。
けれどいつも頭の片隅には友人のことがあり、季節の折々に思い出す友人との出来事を振り返る機会があった。
そうして10数年が経った頃、引っ越しの多い私の連絡先もわからなくなってただろう状態の中、一通のDMが届いた。

『ただいま。
 お待たせしました。
 お茶しない?

 Kより』

友人らしい言葉がそこにあった。
たった3行のメールだけれど、一気に時間を巻き戻されるようにあの頃の友人の笑顔を思い出した。

『おかえりーん。
 おけおけ。
 行こう。』

数日に分けて連絡を取り合い、日程を合わせて都内のホテルで会うことが決まった。
(続く)

 

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